根無し草と寄生根無し草と寄生●ブログ消された伝統の復権で、本山美彦先生が次のようなことを書いている。 …要するに、金融はメディチ家の時代からナショナリストではなく、初めからコスモポリタンなのです。近代化に向けて離陸するときには、何処の国でも強権的な体制を取ります。そこで追放の憂き目に遭うのが国際的な金融一族であり、ユダヤ人もハプスブルグ家もJ.P.モルガンも追放された過去を持っており、そういう連中が逃げ込んだところがアメリカだったわけです。したがって、アメリカの東部金融はヨーロッパから逃げ延び、しかもヨーロッパの貴族と結び付いている人脈によって成立しているのです。そして、今回の金融危機、すなわち自らが推し進めた金融資本主義的ビジネスモデルが崩壊する危機を察知し、このままではまずいことになる考えた彼らは、責任の回避を画策しつつ、新たに自由な活動が保証される場所として中国に目を付けたのではないかと私は見ています… ●ここなんか、欧米の歴史を学んで、肝心のことが学べていなかったことがわかる。ヴェネチアにしてもハプスブルグにしてもきわめて現代的な意味があって、命脈は連綿と続いていることがようやくわかりはじめた。この年になるまで、過去の遠い世界の話かと思いきや、そんなひとごとモードで語るべき代物ではないことに気づかなかった。 …需要と供給で価格が決定されるということは、実はありえない。むしろ産業というのはいびつなもので、儲かる産業と儲からない産業があります。儲からない産業ほど雇用が多いわけですから、その雇用という面から見て、社会的コストとして儲からない産業をいかに維持してきたかが重要です。それが、少なくとも資本主義が生き延びてきた最大の秘密です。にもかかわらず、算数しかわからない連中が「自由主義バンザイ」になってしまい、その結果、今のアメリカのようにろくな産業がないということになっている。コンピュータと、軍事と、金融しか残されていない。だから技術開発をすることもほとんどできない。今のところ「英語」が巨大な産業なのでアメリカは壊滅していませんが、英語が地方語だったら今のアメリカという国は存続できていません… ●先生のこの言葉を読むだけで、米国は、追従すべきものでもないし、ましてや模範とすべきものでもないとわかる。多分、ここのところの議論は、今後、数年の推移で、もう少し、はっきりとわかることなんだろうと思う。 …アメリカというのはやはり懐の深い社会で、今のアメリカを牛耳っている連中は、このわずか二、三十年を牛耳っているだけです。アメリカの本流というのはまったく別のところにあるということを言いたくて… …もしアメリカ人がともかく民間銀行に我々の通貨に対する支配権を認めてしまえば、最初はインフレーションを起こされ、次はデフレーションを起こされて、人から全ての財産が金融のほうに奪われていくであろう。子どもたちよ、その父たちが建国したこの大陸において、朝起きれば家なし子になってしまう。このように通貨発行権は銀行の手に奪われてしまったけれども、本来の所有者である我々米国民が通貨発行の権力を銀行から取り戻すべきである」。これがジェファーソンの言っていることです。 あるいは、エイブラハム・リンカーン。「北部の金融権力の方が南軍より強力な敵だ。私(リンカーン)の前には、南軍とならんで、それよりも強力な金融権力というものが後ろに控えている」。これが奴隷解放を行ったリンカーンの言葉なのです。 「金融権力は平和時には国民を餌食にするし、混乱期には国民をだますものである。金融権力は君主国家よりも専制的であり、独裁国家よりも横暴であり、官僚よりも独善的である。彼らは、彼らの手法を批判するか、彼の犯罪を暴こうとすると、全てのものを敵として論難し、社会から葬り去る。したがって金融権力の悪口をいうにはコソコソというしかない。」これが、ウッドロー・ウィルソンです。ロスチャイルドとかモルガンとか、そういう連中がFRBを作る、そのときに調印したのですが、彼は反対でした。それで、「私の人生で最悪の日である」と。これでアメリカはもうダメになるであろうと… ●国際金融資本批判です。ここは、政治もメディアも手が出せない。唯一、ネット論壇でしか、批判できない。ここの議論を踏まえた上で、社会的に発言しているかどうかは、重要なポイントです。 …中央銀行というのは一つの中立な社会的権力で、あくどい民間銀行を取り締まるものだと思っています。そうじゃないんですよ。中央銀行は民間銀行の代表者、利益代表者なのであり、それが国家から独立するというと非常にかっこよく聞こえるけれども、今のアメリカを見ればわかるように、金融犯罪はアメリカから来たし、現在の金融危機はアメリカ発です。 では、オバマはアメリカの金融機構を変えるべく切開をやったかということです。さんざん悪さをして自ら傷ついてきて、つまり泥棒が空き巣に入って逃げるときに怪我をして、その怪我を治すためにどんどんお金を出している。空き巣に入ったとか犯罪を犯したとかいうことに対して、誰一人しょっぴかない。誰一人として捕まっていない。全世界にこれだけの悪影響を与えながら、アメリカ自身に自浄作用が働かないのはなぜかというと… ●以上は、陰謀論者として、否定できない本山先生のことだから値打ちがある。政府発行紙幣はトライする値打ちがある。 …ヘッジファンドはご存じのように、誰が出資してどれぐらいの規模で動くかが一切秘密なんですね。アメリカではニンジャ・ローンといいます。今度の害悪はヘッジファンドです。サマーズはそういった忍者ローンの大親分です。そのサマーズが、一年間で八百万ドル(約八億円)の報酬を得ています。金融機関からも去年一年間で三百万ドル近い報酬を得ています。つまり三億円です。 さらに許しがたいことに、サマーズはゴールドマン・サックスに対して、十数回講演しているのです。ゴールドマン・サックスですよ。ただ一人、今回の犯人をあげるというならゴールドマン・サックスです。犯人は(ロバート・)ルービン(元財務長官)ですよ。サマーズがこのゴールドマン・サックスで講演して、一回あたりいくらだったら、私と一緒に怒ってくださいますか? 一時間、十三万五千ドルです。千三百五十万円です。一時間ですよ。イヤミなく言うと、今日私はおそらくタダで報告しています(笑)… ●完全に麻痺している。こういう話が実際にあるというのだから、ベーシックインカムの議論や地域通貨としての電子マネーに関する議論は意味が出てくる。強欲に支配されたカネの奴隷ではなく、公共の立場から知恵を絞り、行動すべきことは、日本人ならわかる。根無し草の寄生虫には、それがわからない。日本にもゴールドマン・サックスの法人がある。彼らを追放すべきだとさえ思う。 …日本の研究者が情けないのは、世の中は理屈通りに動いていないという当たり前のことをさっぱりわかっていないのです。世の中ははっきり言って力関係で動きます。シンクタンクがいっぱいありますが、シンクタンクで検討した上で投資決定なんて遅くてできません。ルービンがどう動いたか、オバマがどう動いたか、誰と誰が今日一緒に晩メシを食べたかという、それで動いていく。そういうような形で一つの人脈ができる。その人脈を追っていくことに継ぎ足して一つの経済分析ができるのに、あたかも経済が物理法則にそって動いているかのごとく考えて、問題を立ててくるのが日本の悪い癖です。ジャーナリストも含めて、そういうきちっとした人の動きを見るという習慣を、我々日本人はなぜか持っていません… ●日本の経済学に対する批判です。ここを押さえた上で、経済を語るのでなければ、意味がない。 …金本位制という方向に持っていったとき、金を支配することのできる国が世界を支配することができたわけです。だから日本は満州と台湾をとったのですね。満州、台湾は貿易の主力ですから、日本は金本位制を植民地通貨の中でとらせて、金を集めさせた。そういうなかで、アングロサクソン的国際金融支配に対し、そこから出遅れた連中の三国同盟というのがあった。これを自由な国のアメリカ対ファシズムの国日本の対立とみるのはむちゃくちゃで、こんな情けない歴史観は廃絶しなければならないと思っております… ●先生は、歴史における経済的なバックグランドを強調します。いまにして思えば、歴史といえば、経済史を押さえた上で、カネの動きを押さえた上で、議論すべきもので、そこをはずして歴史を語っても、チープな議論になってしまう。こういう話は、30年前に知っておれば、進路選択において、もう少し、有意義なアクションを取れたのにと悔やまれる。 …日本の銀行が企業にお金を貸す。返そうとすると、返さないで下さい、金利だけ払ってくださったら結構ですというので、銀行に勤めた連中は、貸付係になったら出世コースでした。そして、自分がパナソニックを育てたんだぞとか、サンヨーをここまでにしたのは俺だぞということが、銀行の誇りだったのです。今の金融界は何ですか。とにかくどんどこ株を売って、三日持ったら怒られるんです。早く売りなさいとかね。要するに、大体三日、四日持つのがアナリストで、何十年かけて企業を育て上げてみせるという気概は、今の金融界にはまったくありません。少なくとも日本の金融界はそういった形で奥様から大事なお金を預かって、それが取り返されずに預けっぱなしで、しかも金利はどこでも一緒で固定されていますから、優先的に流したい企業にどんどん融資していったのです。利子も固定されているわけですから、この産業なら儲かる・儲からないではなくて、この産業を育成するんだという方向にお金が流れていった。私は、このことが日本の経済成長の非常に大きな秘密であろうと思います… …郵政民営化のコンサルタントはゴールドマン・サックスです。ゴールドマン・サックスは住友銀行と仲がよろしいのです。その住友銀行と某金融担当大臣(※根賀注:竹中平蔵現慶応大学教授(2011年6月時点))は非常に仲が良かったわけです。だから、郵政民営化後、新会社の社長さんが住友から来るのは既定コースだったのです。 要するに、日本の経済成長の秘密にアメリカが気づいたんですね。アメリカが日本に負ける理由は何かというときに、それは日本の巨大な金融、銀行集団であると。これを叩きつぶせということになってきたのです。理論なんて後で来るんです。まず日本の銀行をつぶせ、つぶす理論を作れということなのです。それが何かというと、日本の銀行は他人様のお金である短期の債務を長期の融資に回している。ここを突かれたんですね。つまり自己資本ではないということです… ●先生のこの講演(議論)は、半年前のものなので、政権交代後、状況が多少変化しているのは承知のとおりです。小沢にしても、国際金融資本の利益に反する行動はあからさまにはとらないと思うし、虎の尾を踏まないよう注意しながら、日本の国益を追求していく手腕が問われている。その際に、こうした議論を知っておかねばならないことはいうまでもないが、国債発行に頼らない、政府発行紙幣というのは、ひとつの試金石だ。 …結局、我々は必死になって貸しはがしをやり、護送船団方式をやめて、ヨーイドンで金融自由化をやりました。その結果、最も儲からないところに張りつけられた金融からひっくり返るのは、火を見るよりも明らかです。日本長期信用銀行、あるいは日本興業銀行という、基幹産業に張りつけられたところが真っ先にひっくり返りました。サラ金を相手にするような、よりいかがわしい銀行が発展していきました。当たり前のことなんです。こんなことは自由化する前にわからなければいけません。政治家はわからなくても、経済学者はわからないといけないのです。それを、金融の自由化は素晴らしい、少なくとも一部のところにお金が滞留しないで非常に効率的に循環すると言っていました。お金が効率的に循環したことが一度でもあるのかと言いたくなります。これをやってしまったということです… …これははっきり言って証券会社です。それをわざわざインベストメント・バンクと呼んだところにアメリカのすごさがあります。そうか、銀行かということになる。そしてゴールドマン・サックスと住友銀行とが比較されるのです。住友銀行は預金銀行です。ゴールドマン・サックスは投資銀行です。初めから違うんです。ヨーイドンで競争したとき、いかに日本の銀行の足腰が弱いかということになる。それを素人が言うのならいいですが、専門家が言うのです。このことは何回も『東洋経済』に投稿しましたが、一度も載せてくれませんでした… ●以上を読めば、愛国者の取るべき道がわかるというものです。リベラルな「東洋経済」をもってしても掲載できない。金融というのは、たいへんな力であり、ましてや欧米の金融資本ににらまれると商売はできない。本山先生には、ぜひもっとはでなことをやってほしいと思う。 …世界のもっとも美味しいところしか採っていなかったものだから、大陸棚まで掘る技術がアメリカにはない。だから、石油価格の暴騰というのは、アメリカに供給能力がないということなんです。それで、ロシアにいってしまう。鉄道にしても、新幹線を走らせてみせてほしいと言いたくなります。無理でしょう。自動車もご存じのようなものです。私が言いたいのは、金融で大もうけして、しかもアメリカの純利益の三〇%が金融がらみであるということです。こういう世界を放置している責任は為政者にあると思います。そのために、アメリカ人には英語とウォルマートのような安売り店しか就職先がないんだということですね。こういう社会ができてしまった。そして、ドルを基軸通貨だというけれど、気がつくと、ドルを基軸通貨にしているのは中国と日本だけだった。こういうことになって、アメリカは今、地獄の瀬戸際に立っているということを認識しておいていただきたい… ●悲観的な気分になります。貨幣の値打ちが下がると、実体経済の重みは増す。そう信じて、これからも働きます。コスモポリタンにしゃぶり尽くされるとこういうことになるのだから、中国もよほどしたかかに行かないと米国と同じ目に会う。生活と離れたところで、自由な資本が移動して、ごく一部の人間だけが寄生生活を謳歌する。しかし、共同体を重視して、身の丈に応じた地に足の付いた経済をまずは十全にすることを忘れてはいけない。 2009年12月19日 根賀源三 |